ゆるら短歌diary

ゆるらと、短歌のこと書いていきます  

2019-01-01から1年間の記事一覧

光のアラベスク/松村由利子 歌集より

てのひらに森を包めば幾千の鳥飛び立ちてわが頬を打つ 森は、南の島の熱の籠もった森、深く深く、数多の生き物を内包させた森・・この島に移り住んできたという経緯が、未だてのひらに包みきれない森に真向かう作者のやや臆する心情があるのでは・・深読みか…

歌集 苺の心臓/上澄 眠 より 

なんだろう・・大人になって、子どものときに使っていたおもちゃ箱を薄暗い場所から、ひっぱりだしてみる次から次へと時間も忘れて、ひとつひとつ手にのせてみる おもしろくて、なつかしくて、やがてせつない・・ この歌集は、そんな感じだ・・ 菜の花や月は…

遠くの敵や硝子を/服部真里子歌集より

陽だまりで梨とり分けるしずかな手あなたとはぐれるなら秋がいい 陽だまりの縁側、窓辺でもいい、母親が梨を剥き主体にとりわけてくれている。梨は水分が多くて冷たい果実だ。小春日和の温もりの中で、そのしんとした冷たさはいっそう際立つ。 肉親といえど…

窓の匂い/前田康子歌集 より

ずっと前から、この人の描く、草や木や花の佇まいや、匂いや手触りが、とても好きだった・・ こっつんと踏んでしまいし椎の実の楕円の感じ足裏にある 固い椎の実を踏んだときの足の触感がリアルである。「楕円」というかたちがつぶさに感じられるところがす…

第2回 WAKATAN(和歌山で短歌を楽しむ会)のおはなし

昨日、和歌山は、この冬いちばんの冷え込み・・ 平地でも積雪ということで、私が、WAKATANグッズを愛車に、よいこらしょと 積み込む時には、吹雪が・・ 参加してくださる予定の皆さんは、無事にたどりつけるだろうかと、超心配性の私はそれでも、えい…

南の窓から(短歌日記2016)/栗木京子歌集より

ねぢ山のすり切れるまで巻きしめし冬の心を椿がわらふ 雨はれて二輪草咲く野の道は夢の入り口あるいは出口 風、ひかり、希望、泥棒だって来る窓なり白きカーテン揺れて 公園で手洗ふ人の袖口に触れて小手毬ほろほろと散る 藤棚の下に思へり首を抱きうしろか…

永田愛さんの歌集「アイのオト」より

永田愛さんの歌集「アイのオト」より 冬の日にわれとふたりで生まれ来しいもうとがいて墓に眠れり 「抱けんまま骨になった」と母は言う木綿豆腐を切りわけながら 人混みでときおりわが手をひいてくれる妹の手はピアノを弾く手 霜月の部屋の扉は修理され滑ら…