ゆるら短歌diary

ゆるらと、短歌のこと書いていきます  

2022-01-01から1年間の記事一覧

橋本恵美歌集『Bollard』を読む

穏やかな湖面である。やわらかな陽がさしている。時々、激しい風が来て、水底深くまで揺らしてゆく。 風が通り過ぎると、また、なんでもなかったようにもとの明るくて静かな湖面にもどってゆく。 その一見、明るくておだやかな湖の、深いところに沈んでいる…

大地たかこ 歌集 『薔薇の芽いくつ』を読む

大地たかこさんの第三歌集、『薔薇の芽いくつ』を読む。 自分の短歌がこのままでいいのかと迷い・・・立ち位置が定まっ ても独りよがりな歌であってはいけないと、いくつかの歌会に参加 しています。 という、あとがきを読んで、著者の姿勢をとても素敵だな…

木下のりみ歌集『真鍮色のロミオ』を読む

作者、木下のりみは、同郷の和歌山の歌人である。年齢も近く、もっともっと短歌に関わる話をして刺激をもらいたいなと思いながら果たせないでいる魅力あふれる歌人だ。 真夜中のガラスをたたくかなぶんぶん真鍮色の小さなロミオ 歌集をいただいて、まず戸惑…

田村穂隆歌集『湖とファルセット』を読む

そうか、僕は怒りたかったのだ、ずっと。樹を切り倒すように話した 歌集『湖とファルセット』の帯にある一首である。 いつからだろうか。作者のなかにある沸々としたマグマのようなエネルギー、そのエネルギーの来し方も、行く先も見えないまま、ただそのエ…

溝川清久歌集『艸径』を読む

冬生まれだからだろうか、冬の空気が好きだ。幼い頃、薪を集めるために山に入った。陽のあたらない木陰の湿った土の匂いや、ふかふかとした枯葉の嵩を足裏に感じながら歩くのが好きだった。せせらぎというにはさびしい水音や、鳥の声、さざ波のような風の音…

永田愛歌集 『LICHT』を読む

どのように生きてもたぶんかなしくてときおりきみの指が触れるよ 歌集の装画は、子どもの手遊びで切り取られたようなあかるいレモンイエローの断片が散らばっている。しかし、この歌集を流れているのは、言いようのないさびしいレモンイエローだ。あたたかい…