ゆるら短歌diary

ゆるらと、短歌のこと書いていきます  

2024-01-01から1年間の記事一覧

紀水章生第三歌集『着地点のない日常』を読む

著者は、川柳をつくり、ドローンを自在に操り、YouTubeでは、美しい映像に短歌の朗読を重ねた作品を、次々と精力的に発表している。歌集『着地点のない日常』は、そんな著者の第三歌集である。 文字盤の消えてしまった時計からじかんを盗む如月の雨 音のない…

白井陽子歌集『切り株』を読む

読み終えて、しばらく泣いた。悲しさではなく、なつかしさとぬくもりと、切なさが入り交じったような涙だった。著者の半生を共に生きたような感慨があった。 白井陽子さんは、2013年に塔短歌会に入会したと記されている。すぐに自ら案内を見て、和歌山歌会に…

大引幾子歌集『クジラを連れて』を読む

著者は、大学四年(1980年)に塔短歌会に入会したと、あとがきにある。歌集『クジラを連れて』は、長く短歌を詠み続けた著者の二十代から四十代半ばの作品を収めているという。 〈ふれあふ〉と書くときスカートたつぷりと裾ひるがえるような〈ふ〉の文字…

光野律子歌集『ミントコンディション』を読む

鳥の羽をモチーフにした美しい装幀である。「かりん」所属の光野律子の第一歌集、『ミントコンディション』とは、「新品同様」という意味らしい。古物取引の場で使われる用語ということで、画廊のバックヤードに三十五年近く勤めたという著者ならではのタイ…

中井スピカ歌集『ネクタリン』を読む

一冊を通して、作品に勢いを感じた。それは、他者を威圧するような勢いというのではなく、ポップコーンがはじけるようなカラッとした軽やかな勢いのなのだ。まっすぐに、素直に、それは読者の心に響いてくる。 まず、序章として、そして後半の折々に詠われて…

丸山順司歌集『鬼との宴』を読む

節分も近いので、鬼の歌集を・・ 丸山順司第二歌集『鬼との宴』である。 第一歌集『チィと鳴きたり』を読んだときには、読者が身構えずに入ってゆける穏やかさと懐の深さを備えた歌集だと思い、その心地よい魅力にとことん浸りながら歌集を味わったように思…

金川宏歌集『アステリズム』を読む

予測変換にたっぷりと浸っている日常のなかで、この『アステリズム』は、その予測変換的なものをことごとく裏切って、バッサバッサと切り捨て、その意表のついた切り口を、あらゆる方向から晒して見せてくれたという感じがする。 平凡に着地はしない。どこま…