ゆるら短歌diary

ゆるらと、短歌のこと書いていきます  

南の窓から(短歌日記2016)/栗木京子歌集より

 

ねぢ山のすり切れるまで巻きしめし冬の心を椿がわらふ

雨はれて二輪草咲く野の道は夢の入り口あるいは出口

風、ひかり、希望、泥棒だって来る窓なり白きカーテン揺れて

公園で手洗ふ人の袖口に触れて小手毬ほろほろと散る

藤棚の下に思へり首を抱きうしろから刺す終はらせ方を

聖五月ゆふかたまけて降り出でし雨は生蜜のきらめきを帯ぶ

嘘をつく、でも約束は守り抜くそんな貌して欅の立てり

ある夜ふと風の尾と尾のつながりて季節は秋に移りゆくなり

はぐれたる大事な人と出会ふため生まれて来しや夕日うつくし

蓋のなき箱と底なき筥ありぬ恋を容るるにいづれ良からむ

熟れてゆく水のおもてに蝶の来てはさみのやうに翅かさねたり

竹群の竹濡れてをり隣り合ひつつも触れてはならぬものある