北山順子さんの、第二歌集「マトリョーシカの涙」をいただきました
ピュアで、やさしい歌集・・・
人生を共に歩んできたような運動靴をきれいに洗う
日常と同化していく非日常この町で起きた心中事件
一斉に飛び立つ鳥に促され大事なことをひとつ決めたい
新しい私が生まれるならこんな優しい風の吹く日であってほしい
たこ焼きを買いに来るように生徒は在学証明書を取りに来る
緩やかな坂は誰かと登っても険しい坂はひとりで登る
よい香りが漂う人の中でその人は草原の匂いがした
「消えたい」も一つの欲であることに気づいてしまう氷点下の朝
降りしきる雪を向かいのビルにいる人も見ているこれは綿雪
父を二度失うような夢を見る水平線に月は浮かんで
大箱の中の中箱、中箱の中の小箱に秘密を入れる
心だけ旅に出ている母の背にメダカの餌はやったかと訊く
死ぬまでにやりたいことのひとつには摑み合いの喧嘩ってのがある
手拭いがS字の形に置かれおりそんなチカラの抜き方をしたい
「このカレーヤバいかも」とう若者と並んで食べるヤバいカレーを
乾涸らびた川を歩くよ今君が泣いているならそこまで行くよ